山本未央税理士事務所

掛川市の税理士、山本未央税理士事務所。税務会計についてご相談ください。

文書作成日:2024/08/06
定額減税の所得制限額を超える人に対する年調減税

[相談]

 私は会社で給与計算を担当しています。
 今年(令和6年)に実施されている所得税の定額減税については、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円超の人はその対象外とされている一方で、毎月の給与計算における所得税の定額減税(月次減税)については、当社の社長(給与年収3,000万円:源泉徴収税額表の甲欄適用者)のように令和6年分の合計所得金額が1,805万円超となる見込みの人であっても、いったんは毎月の給与計算で月次減税の適用を受けることとされ、また、月次減税の適用を受けるか受けないかを自分で選択することはできないと理解しております。
 そこで確認したいのですが、年末調整における所得税の定額減税(年調減税)について、当社の社長をその計算対象に含めて年調減税計算を行う必要はあるのでしょうか。教えてください。

[回答]

 給与年収が2,000万円を超える人については、(原則的には)年末調整の対象とならないことから、年調減税計算を行う必要はありません。詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

1.令和6年実施の所得税の定額減税の概要

 令和6年分の所得税については、定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されます。

 具体的には、居住者(※1)の所得税額から、原則として、下記の特別控除の額を控除するとされています。

  • @本人:3万円
  • A同一生計配偶者又は扶養親族(いずれも居住者に該当する人に限ります):1人につき3万円

※1 居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。

2.所得税の定額減税の対象者

 上記1.の所得税の定額減税は、その人の令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下である場合(※2)に限り行われることとされています。

※2 給与所得のみの個人の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下となる給与収入は、基本的には、年2,000万円(1,805万円+給与所得控除額195万円)以下となります。

3.給与所得に係る所得税の定額減税(月次減税)の実施時期

 扶養控除等申告書を提出している給与所得者(いわゆる甲欄適用者)については、その主たる給与の支払者のもとで、令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与等(賞与を含む)に係る源泉徴収税額から、定額減税による所得税額の控除を受けることとされています(月次減税)。

 また、令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与等(賞与を含む)に係る源泉徴収税額から控除しきれない部分の金額については、以後、令和6年中に支払う給与等に係る控除前税額から定額減税額を順次控除することとされています。

4.所得制限を超える(見込みの)人に対する月次減税の要否

 今回のご相談の場合のように、令和6年分の合計所得金額が1,805万円超となる見込みの人であっても、主たる給与の支払者のもとでは、令和6年6月以後の各月において、給与等に係る月次減税の適用を受けることとされています。

 この点、給与所得者本人が、(給与年収が2,000万円超となる見込みであること等を理由として)主たる給与の支払者のもとで定額減税の適用を受けるか受けないかを自分で選択することはできない、とされています。

5.所得制限を超える人に対する年調減税の要否

 所得税法上、年末調整計算と所得税の過不足額の精算は、給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が2,000万円以下である人に対し、原則として、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合において行うことと定められています。

 したがって、今回のご相談の場合のように、給与年収が2,000万円を超える人については、そもそも年末調整の対象とならないことから、年調減税の適用はなく、確定申告で最終的な年間の所得税額と定額減税額との精算を行うこととされています。

 なお、この場合における源泉徴収票の作成については、「源泉徴収税額」欄には、控除前税額から月次減税額を控除した後の、実際に源泉徴収した税額の合計額を記入し、また「(摘要)」欄には、定額減税等を記載する必要はないこととされていますので、ご留意ください。

[参考]
所法2、190、措法41の3の3、41の3の7、国税庁「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」、国税庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A(概要・源泉所得税関係【令和6年5月改訂版】)」など

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