電子取引の書面保存が2年間猶予されたのでしょうか?
出演: … M社 経理部部長
… 顧問税理士
― M社 ―
M社経理部古門部長と顧問税理士が、打ち合わせをしています。
電子取引の保存、2年猶予されたんですって?
電子取引のデータ保存ですね。
そうですね。
令和4年度税制改正大綱(以下、大綱)で、2年間の宥恕(ゆうじょ)措置が設けられました。
でも、1月からの話ですよね?
弊社は間に合わせましたが、これまで紙保存してて間に合わなかったからといって、どうやって今更認めてもらうんですか?
その辺りも大綱内で記載がされていまして、今回の宥恕措置の適用について、これまで紙に印字して保存していた場合に、手続きを要することなく引き続き紙に印字して保存できるように運用する、ということらしいです。
だからといって、すべてが延長されるわけではないんですよね?
そうですね。
一応、「納税地等の所轄税務署長がやむを得ない事情があると認め、かつ、その保存義務者が税務調査等の際に、その電子データの出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合」という大前提があります。この出力書面も、一応は「整然とした形式及び明瞭な状態」であることが求められていますね。
やむを得ない事情、ねぇ…。
インボイス制度にも、たしかそんな“やむを得ない事情”って語句がありましたよね?
それは恐らく、“困難な事情”ですね。
令和5年3月31日までに登録申請書を提出できなかったことにつき、困難な事情がある場合に、令和5年9月30日までに登録申請書に困難な事情を記載して提出をして登録を受けたときは、令和5年10月1日に登録を受けたものとみなす。この場合の“困難な事情”についての度合いは問わない、というものですね。
このことですよね?
そうです。
それです。
結局、“やむを得ない事情”とやらも、度合いは問われないのかな、と。
そうですね。
財務省の省令改正を受けて年末に国税庁が更新した「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」でも、今回の宥恕措置の適用にあたって、『保存要件に従って保存をすることができなかったことに関するやむを得ない事情を確認させていただく場合もありますが、仮に税務調査等の際に、税務職員から確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを、具体的でなくても結構ですので適宜お知らせいただければ差し支えありません(問41-2(参考))』と述べていますから…。
まあ、そういうことなのでしょう。
早く準備したのに、何だか損をした気分になりますね。
いずれにしろ現状では、2年後の令和6年1月1日からは、要件に従った電子データの保存が必要であることは、先の一問一答内でも明記されていますから、準備しなくていいことではありませんね。
まあ、そうですが…。
御社の場合、これを機にペーパーレス化に順次取り組む、という方向性で、色々と仕組みを構築されていましたよね?
そういった意味では、よかったかもしれませんよ。
確かに、それはいえますね。
支払いの流れのルール化もできましたからね。
特にフローチャートができたのが、よかったと思います。
そうですね。
今回のように法律が変わるのを機に仕組みも変えざるを得ない状況となったときに、それを好機と捉えて、事業発展のための変革ができるかどうか、が重要なのではないでしょうか。
インボイスも、ありますしね。
そうですね。
経理業務は、今後ますます変革が求められていきますね。